この「うつぶせゆらゆら」の効果は大きく分けて2つ。まずはうつぶせの姿勢。お腹に体重がかかると自然と腹圧が高まりやすくなって、疲れや痛みが出にくくなるという。そして、リズミカルな動きが慢性的な痛みの改善につながるという。

効果1・腹圧を高めて筋肉の負担を軽減、疲れや痛みのない体に

 「慢性的な凝りや痛みがある人の多くは、お腹の内側から体を支える腹圧が低下した状態」と舟波さん。お腹まわりには肋骨のような骨格がなく(下図参照)、腹腔の膜組織が内側から風船のように膨らんで、内臓を守る役割を担っている。

 「腹圧は、体幹から姿勢を支える役割もある。お腹がつぶれた猫背姿勢は腹圧がほとんど働いていない状態で、首・肩・腰など体の表層にあるアウターマッスルに負担がかかる。すると、筋膜は硬直してよじれや癒着が生じ、引っ張られるなどの刺激が痛みにつながる」(舟波さん)。

 そこで行いたいのが、「うつぶせゆらゆら」だ。「うつぶせになるとお腹に体重がかかり、床からの適度な刺激が入ることで自然に腹圧が高まりやすくなる。すると、深層にあるインナーマッスルが効率よく働いて姿勢が安定し、疲れや痛みが出にくい体になっていく」(舟波さん)。また、「呼吸も深くゆったりする。リラックスして筋膜はさらにゆるむ」と舟波さんはうつぶせの効果を説明する。

■体は腹圧で支えられている
■体は腹圧で支えられている
腹横筋や骨盤底筋、横隔膜が連動して収縮すると、お腹まわりを支える腹腔の内圧が上昇。この働きが背骨を安定させ、背中側の筋肉が緊張するのを防ぐ。

効果2・ゆれる動きが脳神経系に作用して、慢性の痛みを改善

 リズミカルにゆれる動きには、慢性的な痛みに対するさまざまな効果がある。

 「体をゆらす振動は、筋膜を伝って全身へ届けられて緊張をほぐす。血流も改善するため、硬くよじれた筋膜に水分と柔軟性が戻る」と舟波さん。

 注目すべきは、痛みを伝達する脳神経系への作用だという。そのカギを握るのは、脳の中枢で生命活動を司る「脳幹」だ。

 「内耳にある三半規管がリズミカルなゆれをキャッチすると、その刺激は脳幹へと伝わる。すると脳幹から腹圧を高める指令が出ることで、姿勢のバランスが整う。その結果、横隔膜など腹腔を支える深層のインナーマッスルが本来の働きを取り戻し、筋膜のよじれも改善する」と舟波さんは話す。

 一方、自律神経への効果も期待できると舟波さんは考える。「リズミカルな動きは、脳内で痛みの抑制に働くセロトニンを放出させる。これには自律神経のバランスを調整する働きもあり、心身に深いリラックス効果をもたらす」(舟波さん)。

■「ゆれる」ことで脳幹が鍛えられる
■「ゆれる」ことで脳幹が鍛えられる
末梢組織で生じた痛みの感覚は、電気信号として脊髄経由で大脳へ伝わる。一方、「ゆれる」動きで脳幹に心地よいリズムが伝わると、その情報は脊髄経由でフィードバックされ、腹圧が上昇することで姿勢が安定、筋膜のよじれが改善する。