アンチエイジング効果が次々と確認されている「早歩き」。でも、息が上がってなかなか長時間は続けられない! そんな常識を覆す「疲れない早歩き」の方法があります。体脂肪が減り、筋肉まで増えるという効果も確認済みの歩き方です。散歩や通勤の習慣にしよう。

「早歩き+普通歩き」のオン&オフウオーク

 早く歩く人は認知症になりにくい、寿命が長い──。「早歩き」のアンチエイジング効果が次々と明らかになっている。

 実は早歩きは、有酸素運動であると同時に「筋肉を増やす筋トレ効果もある」と話すのは信州大学医学部 能勢博特任教授だ。

 「普通のスピードで1日1万歩をいくら続けても筋肉は増えない。しかし、全速力の7割以上のスピード(最大体力の70%以上)で1週間に60分歩くと、数カ月で筋肉が増え、体力が高まることが分かっている」(能勢特任教授)。筋肉が増えれば代謝が上がり、より太りにくい体になる。

 しかし、長時間早歩きを続けるのは難しい。そこで能勢特任教授が考案したのが「インターバル速歩」だ。これは、息が上がるほどの早歩き(オン)と普通歩き(オフ)を3分ずつ繰り返す歩き方だ。

 早歩きをすると、血中に乳酸ができて運動を続けるのがつらくなるが、「3分間、普通に歩く間に乳酸が代謝され、再び速歩ができるようになる」と能勢特任教授。また「速さが普通歩きに切り替わるときに、早歩き中に収縮する筋肉で圧迫され気味だった血管が一気に拡張することで、血管が若返る」(能勢特任教授)。

オン&オフウオークがアンチエイジングに効くしくみ
オン&オフウオークがアンチエイジングに効くしくみ
全速力の7割以上の運動(早歩き)は筋肉にダメージを与える程度の高負荷運動なので、筋力が上がる。またウオーキングは有酸素運動なので、続ければ体脂肪が燃え、体重も減る。また、早歩きから普通歩きに変わるときに一気に血管が拡張し、血管若返り物質の一酸化窒素(NO)が出る(下イラスト)。これが血圧が低下する一因に。
「早歩き」が「普通歩き」に切り替わるときに血管が拡張し、血管若返り物質ができる
「早歩き」が「普通歩き」に切り替わるときに血管が拡張し、血管若返り物質ができる
筋肉が緊張すると血管が収縮し、力を抜いたとき血管は一気に拡張する。このとき、血管若返り物質のNO(一酸化窒素)が出て、血圧が下がる。

 これまでに6000人以上が実践し、効果を実証してきた。6分1セットを週20セット行うと、筋力が上がる、血糖値、血圧など生活習慣病の指標が改善するなどが明らかに。

4カ月で血糖値が約3%低下
4カ月で血糖値が約3%低下
男性198人と女性468人が体力別に週20セットのインターバル速歩を行った。4カ月後、血糖値は男性で平均約4%、女性で平均約3%下がっていた。血圧やコレステロール値も改善していた。(データ:Br J Sports Med;45,216-224,2011)

 最近は遺伝子レベルでのアンチエイジング効果も確認された。早歩きと普通歩きを組み合わせた「オン&オフウオーク」を6カ月続けると、「計算上、10歳以上若返ったことになる」(能勢特任教授)という。

老化を進める遺伝子の活性が抑制された
老化を進める遺伝子の活性が抑制された
通常、加齢とともに炎症促進遺伝子(ASC遺伝子)は活性化するが、インターバル速歩を6カ月続けた高齢者(230人)ではその活性化が抑えられていた。能勢特任教授と信州大学医学部の谷口俊一郎特任教授の共同研究。(データ:Int J Sports Med;31,671-675,2010)

 筋肉がつき、若返る早歩き。通勤の往復時に2セット(12分)ずつやれば、週5日間でOKだ。

オン&オフウオークでアンチエイジング&ダイエット効果を確認

体脂肪率が3%ダウン
体脂肪率が3%ダウン
20〜80代の912人(男性351人、女性561人)が週20セットのインターバル速歩を5カ月間行った。体脂肪率が男性は平均24.4%→21.6%、女性が平均31.6%→29.0%と、男女ともに約3%減少。体重も減っており、ダイエット効果が確認された。(データ:能勢特任教授)
太ももの筋力が増えた
太ももの筋力が増えた
44〜78歳の男女141人を「週20セットのインターバル速歩を行う」「1日1時間以上の散歩を行う」「何もしない」の3群に分け、それぞれを実施。5カ月後、インターバル速歩群だけ太ももの筋力が約13%上がっていた。(データ:Mayo Clin Proc;82,803-811,2007)