人生のちょうど折り返し地点に立つARIA世代。仕事への責任感や周囲への義務感にとらわれ、「自分の幸せ」を後回しにしていませんか? 人生100年時代を前向きに生き抜くためには、このへんで自分の幸福度を上げるシフトチェンジが必要かも。自分の「好き」を追いかけて、人生を転換させた7人のケースから、ARIA世代の「幸福論」を考えます。

 2021年1月から、電通は新会社ニューホライズンコレクティブを設立し、「ライフシフトプラットフォーム」というプログラムをスタートさせた。200人以上の電通社員が退職して新会社と契約したという。どのようなプログラムなのか、ニューホライズンコレクティブ代表の野澤友宏さんと、メンバーとして参加している長尾千登勢さん、石原夏子さんに話を聞いた。

社員の学び直しと独立までの準備をサポートする新会社

編集部(以下、略) このプログラムが誕生した背景について、教えてください。

野澤友宏さん(以下、野澤) 電通では、2017年~18年頃、全社を挙げて労働環境改革を行っていました。人生100年時代が大きなテーマとなった頃です。社内の有志で、今後どんな働き方があり得るのかを話し合い続けてきました。

 私はクリエーティブ部門で20年勤めていました。アートディレクターの仕事は、本来なら40~50代は一番脂がのってくる時期ですよね。でも企業の中では、だんだんチームの中心を担う層が年下になり、蓄積された専門スキルがあっても、いつしかマネジメントに入って現場から離れることになります。定年退職後、もう一度スキルを生かした仕事をするかというと、やらない人が多いんです。

 もし現場の仕事を続けたいといっても、いきなり組織を飛び出すのはとても勇気がいります。学び直しと、事業を起こす準備ができる仕組みはないものか、と考えて生まれたのが、ライフシフトプラットフォームです。

ニューホライズンコレクティブ代表 野澤友宏さん
ニューホライズンコレクティブ代表 野澤友宏さん

―― どのような仕組みなのですか?

野澤 参加を表明したメンバーは、電通を退職して、個人事業主として、あるいは起業して、新会社のニューホライズンコレクティブ(以下、NH)と契約します。10年間安定的な報酬を得ながら、次のライフステージに向けて準備をするのです。

 NHは電通の100%子会社ですが、電通の仕事を受託することを前提としていません。

 メンバーの報酬は、固定報酬とインセンティブ報酬の二つがあります。メンバーは自ら企画を立て、リサーチして顧客を開拓する提案活動をすることが求められ、それに対して固定報酬が支払われます。また提案が実施に至った場合、その業務から得た利益のうち一定割合がインセンティブとして本人に分配されます。そのほか、NHとは関係なく、個人事業主として自身で開拓した業務から得た利益は100%本人の収入となります。

 10年間のうちに固定報酬を段階的に減らし、インセンティブの割合を増やしていくことを目指します。